2019年10月19日 [お客様の声]
from Cozy Piano Lounge Regulars
目黒川へ向かって下がる坂の入り口にあるCozy Piano Loungeは、玄関扉へのアプローチが階段になっていて、その階段の最初の数ステップをお客さんが降りて来るシルエットは店内から磨りガラス越しに見えます。最近は指紋認証や静脈認証、顔認証など様々な個人認証技術があり、その中には歩容認証と言って人が歩く時の姿勢や歩幅や速度などその人の歩く癖で個人を特定する技術があるそうですが、Cozyでは店内にいる従業員や常連客が時折その階段を降りて来る様子を眺めては。「あっ、○○さんが来た」なんて当てっこをしていることがあります。あるいはお店の前で入ろうか入るまいか躊躇している様子を見ながら、「あれは、飛び込みのお客さんかな。怖くないから入っておいで」なんて話していたりする事もあります。
一方、お店の外から店内の様子はやはりその磨りガラス越しにぼんやり見えるのですが、なんとなくお客さんが沢山入っているか、あるいは静かな夜なのかが分かるくらいです。あるいは入り口から様々な演奏の音が漏れ聞こえて来るので、「あぁ、誰か歌っているなあ」なんて事は分かるのですが、所詮その程度なので、Cozyに初めて覗くには少々勇気がいるかも知れません。この前もCozyで飲んでいたらお店の前で結構長い時間、入ろうか止めようかと迷っていた様子の男性が恐る恐る入ってきました。何でも九州から出張で東京に来たついでだそうで、40代になってから若い時にやっていたピアノを再開したというジャズピアノを披露してくださり、お会計の頃にはすっかり「ちゃん」付けで呼ばれるくらいに打ち解けていました。
そんな新しいお客さんがCozyにやって来る度に、必ず思い出すのがYさんの話です。いまとなっては常連のひとりであるUさんが初めてCozyに顔を出した夜、お店の前で入ろうか止めておこうかと逡巡しているUさんに「怖くないから一緒に入ろう」と声を掛けたのがYさんなんだそうです。そんなYさん自身も、目黒駅の西口の権之助坂の片隅にひっそりと佇むあるバーでたまたま出会ったKさんに誘われてCozyにやって来たそうです。YさんもKさんも目黒にお住まい。僕も目黒に来てかれこれ20年が経ちますがこういうコミュニケーションがある街から一向に引っ越しする気になれません。
さて、大手メーカーを定年退職したYさんは、僕の目には悠悠自適な日常を送られているように映ります。ワインやアートに詳しくて、「最近やっている美術展で、これは観ておいた方がいいというおすすめはありますか？」などと訊ねると詳しく教えてくれます。それからスポーツ観戦も好きなようで2018年のサッカー・ワールドカップを観にモスクワへ出かけたり、ツール・ド・フランスをずっとテレビで観ていたりするような人です。一方音楽は、70年代の洋楽がお好きなようで、Cozyのオープンマイクではほろ酔い加減になるとビリー・ジョエルの「ピアノマン」やルイ・アームストロングで有名な「この素晴らしき世界」などを渋い声で歌います。ジャズピアニストのOさんが来ると、スティーリー・ダンの「リキの電話番号」やドナルド・フェイゲンの「愛しのマキシン」なんてこれまた通な変化球を繰り出して来ます。お酒にアートにスポーツに音楽と、いろんな事にのめり込むYさんの姿には、シニカルでマイナーなモノが好きなオタクっぽいこだわりが見え隠れします。そう言えばイギリスのコメディグループ、モンティパイソンが大のお気に入りだそうで、お酒で出来上がったYさんについモンティパイソンの話を振ると、まるで針飛びするレコードのようにずっと同じ話を繰り返し繰り返し熱く語り出し止まらなくなってしまいます。そう言えばモンティパイソンを産んだイギリス人のような理屈っぽくて少々面倒臭いセンスと、たまたまバーで知り合ったKさんに誘われてCozyに来てしまったり逆に見ず知らずのUさんをCozyに誘ってしまったりするような世話好きで愛嬌たっぷりなオープンマインドがYさんらしさの主成分かも知れません。
かつてCozyで長らく勤めていたスタッフの女の子がCozyを去る事になり、常連仲間でお金を出し合ってスーツケースを餞別に贈りました。そしてそのスーツケースには空港の荷物受取場のベルトコンベアでも目印になるように「from Cozy Piano Lounge Regulars」と書いた手製のラゲージタグを括りつけ、それと同じものをその仲間にも記念として配りました。僕も含む賛同者の皆さんはそのタグをそれぞれCozyに入れたマイボトルの首にかけています。KさんやOさんUさんのボトル、そしてもちろんYさんのボトルにも。人付き合いがよくてなんだか楽しい常連仲間のひとり。それがYさんです。
一方、お店の外から店内の様子はやはりその磨りガラス越しにぼんやり見えるのですが、なんとなくお客さんが沢山入っているか、あるいは静かな夜なのかが分かるくらいです。あるいは入り口から様々な演奏の音が漏れ聞こえて来るので、「あぁ、誰か歌っているなあ」なんて事は分かるのですが、所詮その程度なので、Cozyに初めて覗くには少々勇気がいるかも知れません。この前もCozyで飲んでいたらお店の前で結構長い時間、入ろうか止めようかと迷っていた様子の男性が恐る恐る入ってきました。何でも九州から出張で東京に来たついでだそうで、40代になってから若い時にやっていたピアノを再開したというジャズピアノを披露してくださり、お会計の頃にはすっかり「ちゃん」付けで呼ばれるくらいに打ち解けていました。
そんな新しいお客さんがCozyにやって来る度に、必ず思い出すのがYさんの話です。いまとなっては常連のひとりであるUさんが初めてCozyに顔を出した夜、お店の前で入ろうか止めておこうかと逡巡しているUさんに「怖くないから一緒に入ろう」と声を掛けたのがYさんなんだそうです。そんなYさん自身も、目黒駅の西口の権之助坂の片隅にひっそりと佇むあるバーでたまたま出会ったKさんに誘われてCozyにやって来たそうです。YさんもKさんも目黒にお住まい。僕も目黒に来てかれこれ20年が経ちますがこういうコミュニケーションがある街から一向に引っ越しする気になれません。
さて、大手メーカーを定年退職したYさんは、僕の目には悠悠自適な日常を送られているように映ります。ワインやアートに詳しくて、「最近やっている美術展で、これは観ておいた方がいいというおすすめはありますか？」などと訊ねると詳しく教えてくれます。それからスポーツ観戦も好きなようで2018年のサッカー・ワールドカップを観にモスクワへ出かけたり、ツール・ド・フランスをずっとテレビで観ていたりするような人です。一方音楽は、70年代の洋楽がお好きなようで、Cozyのオープンマイクではほろ酔い加減になるとビリー・ジョエルの「ピアノマン」やルイ・アームストロングで有名な「この素晴らしき世界」などを渋い声で歌います。ジャズピアニストのOさんが来ると、スティーリー・ダンの「リキの電話番号」やドナルド・フェイゲンの「愛しのマキシン」なんてこれまた通な変化球を繰り出して来ます。お酒にアートにスポーツに音楽と、いろんな事にのめり込むYさんの姿には、シニカルでマイナーなモノが好きなオタクっぽいこだわりが見え隠れします。そう言えばイギリスのコメディグループ、モンティパイソンが大のお気に入りだそうで、お酒で出来上がったYさんについモンティパイソンの話を振ると、まるで針飛びするレコードのようにずっと同じ話を繰り返し繰り返し熱く語り出し止まらなくなってしまいます。そう言えばモンティパイソンを産んだイギリス人のような理屈っぽくて少々面倒臭いセンスと、たまたまバーで知り合ったKさんに誘われてCozyに来てしまったり逆に見ず知らずのUさんをCozyに誘ってしまったりするような世話好きで愛嬌たっぷりなオープンマインドがYさんらしさの主成分かも知れません。
かつてCozyで長らく勤めていたスタッフの女の子がCozyを去る事になり、常連仲間でお金を出し合ってスーツケースを餞別に贈りました。そしてそのスーツケースには空港の荷物受取場のベルトコンベアでも目印になるように「from Cozy Piano Lounge Regulars」と書いた手製のラゲージタグを括りつけ、それと同じものをその仲間にも記念として配りました。僕も含む賛同者の皆さんはそのタグをそれぞれCozyに入れたマイボトルの首にかけています。KさんやOさんUさんのボトル、そしてもちろんYさんのボトルにも。人付き合いがよくてなんだか楽しい常連仲間のひとり。それがYさんです。
