2019年09月28日 [お客様の声]
お子ちゃま口とフライドチキン
Cozy Piano Lounge の常連客きってのジャズピアノ二ストOさんは、いつもお風呂あがりのようなゆるい表情で、細い眼に柔和な優しさを湛えてお酒を飲んでいます。しかし時折、ちょっぴり邪悪な眼差しを覗かせることがあります。KさんがCozyにやって来たからです。Kさんが来るとCozyの空気が変わります。
Kさんは広く知られた老舗ビアホールの社長です。ある晩KさんがCozyで飲んでいた時に、誰もが知っているお笑い芸人さん御一行と鉢合わせしたそうです。別のテーブルにはほろ酔い加減のサラリーマンのグループ。そのサラリーマンの御一行はKさんがその有名ビアホールの主人と知ると、そのテレビでよく見かけるお笑い芸人氏をさしおいて、「一緒に写真撮ってください」とKさんに詰め寄ったとか。そのテレビタレントさんは「俺より人気のあるこのおじさん一体誰?」と言いたげな怪訝そうな表情で首を傾げていたとかいないとか。
でもKさんが来ると空気が変わるのは決して有名な社長さんだからではありません。Kさんは有名店の社長なのに自身のお店でレジを叩いて接客をするようなとても腰の低い商売人です。Cozyへは、そのビアホールの営業が終わった後の少し遅い時刻に、その日の仕事の疲れを癒しに立ち寄るみたいです。
では、そんなKさんがなぜ空気を変え、Oさんが邪悪になるのか。それはKさんが常に周囲を観察して何か突っ込みどころがないかを探しているようなお茶目なところがあって、僕なんかは「あぁ、また見つかっちゃったか」なんて思う事がしばしば。そんなKさんの波長にOさんは自然とチューニングを合わせてしまい、いたずらっ子の顔を覗かせてしまうからです。
この二人は名コンビです。夏実ママが六本木の老舗ジャズクラブを貸し切ってバースデー・パーティーを開くことになった時、Kさんは自ら司会を買って出て、さらに「ジャズシンガーになる!」と宣言しました。そして最初に取り組むにはどんな曲が良いかをOさんに相談したそうです。初めのうちはOさんが提案する曲の数々にKさんのお気に召すものが見つからなくて難航したみたいですが、やがて「You’d Be Nice to Come Home To」に決まります。そしてKさんはCozyでOさんを見つけると決まってこの曲の伴奏をお願いして練習を繰り返しましたが、日にちが迫って来てもなかなか思い通りに歌えないと焦っていました。そこで本番でも伴奏をするOさんの指導の元で特訓をすることにします。わざわざ時間をつくり、カーシェアリングで車を借りてまでして送り迎えもして、その特訓に付き合ってくれたOさんに、Kさんは感激したそうです。
しかしKさんとOさんは波長の合わない部分もあります。Cozyが出すペペロンチーノを特別辛くしてと注文をつけるOさんとは対照的にKさんは辛いのが苦手。50代半ばにしてお孫さんを溺愛するロマンスグレーのお爺ちゃんだというのに、自ら「お子ちゃま口だから」と言います。お子ちゃまと言えばもうひとつ。Cozyのフライドチキンを「大き過ぎる」と難癖をつけてひと口大に切って出して欲しいと言い出す始末。
実はCozyのフライドチキンは都内でも出しているお店が少ない「チキンバラバラ」風のフライドチキンなのです。
「『チキンバラバラ』ってなに?」と思われる方は沢山いらっしゃると思います。僕も実は、Cozyで初めて知りました。「チキンバラバラ」とは沖縄のタコス屋さんなどで見かけるいわゆるB級グルメで、沖縄料理屋で修行を積んだチーフが腕を振るうCozyのスペシャリテのひとつです。二度揚げして衣をカリカリにさせた逸品はそんじょそこらのフライドチキンではありません。確かにひと口で頬張るには大ぶりです。同じ飲食業を営み、日頃からお客様にとって食べやすい料理を提供することに腐心するKさんからすればひと言言わざるを得なかったのかも知れません。しかし僕にしてみたら大きい塊をかぶりついた方が絶対美味しいのにと思います。
あぁ、書いていたらなんだかかぶりつきたくなって来ました。
Kさんは広く知られた老舗ビアホールの社長です。ある晩KさんがCozyで飲んでいた時に、誰もが知っているお笑い芸人さん御一行と鉢合わせしたそうです。別のテーブルにはほろ酔い加減のサラリーマンのグループ。そのサラリーマンの御一行はKさんがその有名ビアホールの主人と知ると、そのテレビでよく見かけるお笑い芸人氏をさしおいて、「一緒に写真撮ってください」とKさんに詰め寄ったとか。そのテレビタレントさんは「俺より人気のあるこのおじさん一体誰?」と言いたげな怪訝そうな表情で首を傾げていたとかいないとか。
でもKさんが来ると空気が変わるのは決して有名な社長さんだからではありません。Kさんは有名店の社長なのに自身のお店でレジを叩いて接客をするようなとても腰の低い商売人です。Cozyへは、そのビアホールの営業が終わった後の少し遅い時刻に、その日の仕事の疲れを癒しに立ち寄るみたいです。
では、そんなKさんがなぜ空気を変え、Oさんが邪悪になるのか。それはKさんが常に周囲を観察して何か突っ込みどころがないかを探しているようなお茶目なところがあって、僕なんかは「あぁ、また見つかっちゃったか」なんて思う事がしばしば。そんなKさんの波長にOさんは自然とチューニングを合わせてしまい、いたずらっ子の顔を覗かせてしまうからです。
この二人は名コンビです。夏実ママが六本木の老舗ジャズクラブを貸し切ってバースデー・パーティーを開くことになった時、Kさんは自ら司会を買って出て、さらに「ジャズシンガーになる!」と宣言しました。そして最初に取り組むにはどんな曲が良いかをOさんに相談したそうです。初めのうちはOさんが提案する曲の数々にKさんのお気に召すものが見つからなくて難航したみたいですが、やがて「You’d Be Nice to Come Home To」に決まります。そしてKさんはCozyでOさんを見つけると決まってこの曲の伴奏をお願いして練習を繰り返しましたが、日にちが迫って来てもなかなか思い通りに歌えないと焦っていました。そこで本番でも伴奏をするOさんの指導の元で特訓をすることにします。わざわざ時間をつくり、カーシェアリングで車を借りてまでして送り迎えもして、その特訓に付き合ってくれたOさんに、Kさんは感激したそうです。
しかしKさんとOさんは波長の合わない部分もあります。Cozyが出すペペロンチーノを特別辛くしてと注文をつけるOさんとは対照的にKさんは辛いのが苦手。50代半ばにしてお孫さんを溺愛するロマンスグレーのお爺ちゃんだというのに、自ら「お子ちゃま口だから」と言います。お子ちゃまと言えばもうひとつ。Cozyのフライドチキンを「大き過ぎる」と難癖をつけてひと口大に切って出して欲しいと言い出す始末。
実はCozyのフライドチキンは都内でも出しているお店が少ない「チキンバラバラ」風のフライドチキンなのです。
「『チキンバラバラ』ってなに?」と思われる方は沢山いらっしゃると思います。僕も実は、Cozyで初めて知りました。「チキンバラバラ」とは沖縄のタコス屋さんなどで見かけるいわゆるB級グルメで、沖縄料理屋で修行を積んだチーフが腕を振るうCozyのスペシャリテのひとつです。二度揚げして衣をカリカリにさせた逸品はそんじょそこらのフライドチキンではありません。確かにひと口で頬張るには大ぶりです。同じ飲食業を営み、日頃からお客様にとって食べやすい料理を提供することに腐心するKさんからすればひと言言わざるを得なかったのかも知れません。しかし僕にしてみたら大きい塊をかぶりついた方が絶対美味しいのにと思います。
あぁ、書いていたらなんだかかぶりつきたくなって来ました。