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2019年09月21日 [お客様の声]

ジャズィーなペペロンチーノ

Cozy Piano Loungeは今年で12周年だそうです。移り変わりの激しいここ目黒で干支がひと巡りする歴史があればもはや老舗と言っても過言ではないでしょう。事実、少し前に文化放送のあるラジオ番組の特集コーナーでは、「最近話題のオープンマイクのお店」のトップバッターとして紹介されました。そんなお店なのですから印象に残る故人の常連客がいても不思議ではありません。最近連載を始めたばかりのこのブログで、まず会長とYさんというお亡くなりになった常連客のエピソードを書いたのは、それだけこのおふたりがCozyでの記憶のなかで自然に脳裏に浮かんで来てしまう思い出深い方々だからです。しかし理由はそれだけではありません。それはやはり「死人に口なし」なんて言ってしまえば甚だ失礼ですが、いずれお会いする機会がある方についてつい筆が滑ってしまい、「もうホソイの顔なんか見たくない。Cozyにも行くもんか」なんて逆鱗に触れてしまうようなことがあれば元も子もないという怯えがあるからです。

しかし、やはり故人のエピソードが続くのもどうかな。そんな事を思っていた矢先に案の定、このお店Cozyの夏実ママから「死んだ人ばっかりというのもね」とのご指摘。まあ、このブログへの投稿もルーチン化してきたので、「慣らし運転」はこの辺にして、ビクビクしつつもこのスペースの生贄を探すことにします。Cozyや僕に縁があって書かれる内容に不安がある方は定期的にこのブログをチェックした方がいいかも知れませんね。あるいはCozyで遭遇した僕に色々ご馳走してくれたら予防策として有効かも知れません。

冗談はさておき、そんな指摘を夏実ママからされた夜。僕の隣の席では常連のAさんがちょこんと座っていました。いつもやや遅めの時間にふらりと現われて黒ビールの小瓶を1〜2本を空けるAさん。その日の疲れを癒すために節度を持ってお酒をたしなんでいるような風情の知的で魅力的な女性なのですが、今回の餌食はあいにく彼女ではありません。彼女のエピソードはまたの機会にとっておくのでAさんファンの方々は特にこのブログの定期巡回をお忘れなく。

そのAさんが、スマホの画面に表示したスピッツの「醒めない」という曲の歌詞を僕に見せて言います。

「この歌詞を読むと、Oさんの事がつい頭に浮かぶんです。この『ロック』を『ジャズ』に変えたら……」

どれどれ、と差し出された画面を僕は覗き込みます。

まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が
最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められている
さらに育てるつもり
               「醒めない」(作詞;草野正宗)より

OさんもまたCozyでファンの多い常連客のひとりです。Cozyのスタッフではなくシステムエンジニアとして昼夜働いている人なのですから、当然Cozyに来るのは不定期です。しかしそれにも関わらずOさんをお目当てにCozyに来る人がいるほど。というのもOさんはプロでも舌を巻くほどのジャズピアノの名手で、自らソロで演奏を披露してくれるだけでなく大抵のジャズやポップス、J-POPのピアノ伴奏も気さくに応じてくれるからです。Oさんのソロピアノに魅了された人や、Oさんのカラオケとは全く違う伴奏を体験して感激したお客さんが夜な夜なCozyの扉を開けて「今日はOさん来る?」なんて言います。

Oさんの演奏スタイルはモードジャズとでも言うのでしょうか。Oさん自身が最も影響を受けたジャズピアニストとして挙げるハービー・ハンコックさながらにテンション・ノートの効いた浮遊感が漂う演奏を聴かせてくれます。ジャズピアノの巨匠であるセロニアス・モンクがその名前や演奏スタイルから「高僧」と渾名されていましたが、Oさんもまたひたむきなジャズの求道者といった感じで、それがAさんをして「醒めない」人だと言わしめたんだと思います。そんなOさんのピアノ演奏から発せられる波動のようなものに僕も共鳴したんだと思います。僕自身の心の中でもいつしか「やっぱり音楽っていいな。何かやりたいな」なんていう気持ちが心の中で芽生えました。僕がクロマチック・ハーモニカを吹くようになったきっかけはいくつかありますが、彼の演奏もそのひとつです。

Cozyには店内から入り口の階段を降りてくる人影が見える磨りガラスがありますが、Oさんは大柄なのでそのシルエットで判ります。最近は着崩したジャージ姿と時が多いのですがよく見るとこだわりを感じる
おしゃれないでたちです。演奏同様に浮遊感を醸しつつ、それでいて重厚感も湛えたほんわかした雰囲気があるので、Cozyの人気スタッフMちゃんからはいつも親しみを込めて「アシベ」と呼ばれています。なんでも漫画「少年アシベ」に出てくる主人公アシベを彷彿とさせるのだとか。確かにCozyの厨房で料理をつくるゴマちゃんのようなチーフとはいいコンビです。

このチーフが作るペペロンチーノがOさんはお気に入り。ジャズ同様にペペロンチーノにもテンションの効いた辛味を求めているみたいで、「辛くして」なんて注文をしていたら、いつの間にかそれを見ていた隣のお客さんからも「あれと同じの」というオーダーが入るようになりました。通常メニューの「ペペロンチーノ」よりも辛めの「ペペロンチーノOさん風」なる裏メニューができました。僕もCozyでペペロンチーノを注文する時は「Oさん風で」とひと言添えます。

Peperoncino

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