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2019年10月12日 [お客様の声]

ギネスの泡

先日、Cozy Piano Lounge に顔を出したところ、僕がいない時にこのブログの事が話題になっていたと夏実ママが教えてくれました。その会話に参加していたのはこのブログで紹介した某老舗ビアホールの社長Kさんと、ジャズピアノの求道者Oさん、そしてOさんのエピソードで少し登場いただいたAさん。Aさんは「Oさんの次は、Kさんが来ると思っていた」なんて評していたのだとか。そんな話を聞いてしまった僕はAさんを取り上げざるを得ません。

Cozy Piano Lounge では常連になるとボトルキープを入れてそれぞれの流儀でお酒を楽しんていると書きましたが、もちろんボトルを入れない人もいます。ボトルを入れない人は、そもそもお酒が苦手な人か、オープンマイクの店という評判を聞きつけて年に数回、目黒にやってくる遠方からの人。そして自制心のある人です。Aさんは3番目のタイプのように見えます。月に2〜3回位のペースで遅めの時間にふらっと現れてはギネスの小瓶を1〜2本楽しみながら、話題に花を咲かせ、歌を数曲唄って帰っていきます。

お酒はそこそこ強いけれどお酒の誘惑には弱い僕にはなかなか真似のできない、クールな大人のお酒の嗜み方をするAさんは、ショートヘアにカーキ色のパンツルックというボイッシュな格好の女性です。小柄な彼女がCozyにやって来ると、背中を丸めてちょこんと隙間に入り込むようにして席に座ります。その様子からは少年っぽい雰囲気も漂ってきます。そう言えば彼女、大の車好きなのだとか。しかも愛車は夜な夜なヤビツ峠あたりを攻めているお兄ちゃんが乗っていそうなマニュアル。慌ただしくクラッチペダルを踏み込んで都内をちょこまか走っている様子を想像すると益々少年っぽい。もしかしたら「名探偵コナン」の主人公工藤新一のように黒の組織によって薬を飲まされてしまったのかも知れない……なんていうのは子供じみた妄想ですが、彼女は女医さんで大学の研究施設でかなり先端的な研究をしているらしいので、もしかしたらその解毒剤を自ら開発しようと……妄想が膨らみすぎました、僕の悪い癖です。

ある時、僕がCozyでAさんと居合わせて一緒に飲んでいて急にめまいを起こした事がありました。その時にAさんは、慌てず咄嗟に僕の顔を覗き込んでその目が左右に横揺れする症状を確かめて「眼振をしているから、しばらく目を瞑っていてください」なんて対処法を教えてくれました。僕は「あぁ!やっぱりお医者さんだぁ!」なんて感心したものです。それから「アポロは月に行っていない説」のような都市伝説や、パラレルワールドを描いた海外ドラマ「フリンジ」のようなSFにも関心があるらしく、「おぉ!さすがリケジョ!」なんて思う事がしばしばあります。

そんなAさんですが、ここCozy Piano Loungeでひと度マイクを持つと、宇多田ヒカルに椎名林檎、それからスピッツやサカナクション、はたまたレキシなんてJ-Waveリスナーが好きそうな選曲で、彼女が好きなギネスの泡のようなスモーキーでほのかに甘い、憂いのある女性らしい落ち着いた歌声を披露してくれます。そう言えばボブ・ディランが「声の低い女性が好き」だと答えていたインタビュー記事をどこかの音楽雑誌だか音楽番組だかで見聞きした憶えがあります。もっとももう30年以上前の記憶なのであやふやですがボブ・ディランでなくとも、落ち着いた女性の声が好きな男性は実は結構多いものです。その空気の振動に子宮の中で聴いた響きのような、つまりある種の母性のようなものを感じているのかも知れません。そんな声でその場に居合わせたおじさん達を魅了しています。かくゆう僕もそんなおじさんの一人です。

目黒にあるオープンマイクのお店、Cozy Piano Lounge はそんなAさんのように色んな顔を持った人々が、お酒と音楽と飲み友達を求めて集まって来る人間交差点です。

guinness

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