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2019年10月05日 [お客様の声]

ボトルキープの流儀

Cozy Piano Lounge では、お客さんがそれぞれの寛ぎ方で楽しんでいます。オープンマイクのお店なので、歌を唄いたくて来る人や楽器を演奏したくて来る人がいらしゃいます。その一方で、音楽は聴く専門でもっぱらお酒を飲んだりお食事を楽しんだりするようなお客さんもお見えになります。僕もかつては後者の部類でしたが、このタイプの多くは常連になるとボトルキープをするようになります。もちろん前者の方々だって、そもそもお酒が苦手な方やこの目黒のオープンマイクのお店の噂を聞きつけて遠方からはるばる来られるような方はなかなか当てはまらないかも知れませんが、そういった事情でもなければボトルを入れていらっしゃる方が多いかも知れません。

ボトルの入れ方には人それぞれに流儀があるみたいです。僕の場合はIWハーパーを1本だけ。紆余曲折を経て一途な男になりましたが、2本3本と入れる浮気者……おっと失礼、甲斐性のある方も割といらっしゃいます。焼酎とウィスキーだったり、異なる銘柄のウィスキーだったり。その日の気分やお連れさんの顔ぶれによって飲むお酒を変えながら楽しんでいるようです。

ヒロさんもそんな常連のひとり。シーバス・リーガルとジャック・ダニエルの二刀流です。そして楽器の方もマルチプレーヤー。Cozyでは主にフルートを吹いていますが、フリューゲルホルンやソプラノサックスを持ってくる日もあります。昼の顔は大手メーカーのビジネスマン。海外出張の際、荷物にフルートを忍ばせるほどの熱の入れようで、出張先で周囲の音漏れを気にしてホテルの風呂場で練習していたら翌朝同行して同じホテルに宿泊していた同僚が、「このホテル、夜中に風呂場から何やら笛のような音が聴こえないか?」と気味悪がっていたとか。どうやらバスルームの配管を通じて音が漏れてしまったそうです。このエピソードを聞いた僕は、少し前に政治経済事情視察なんて嘘をついて国会をズル休みをして、愛人とハワイ旅行を楽しんだ国会議員の醜聞を思い出しました。「フルート」を「愛人」に変換したらまるでその代議士先生みたいに破廉恥この上ないけれど、「フルート」だもんなぁ……なんて思ったもんです。

でもヒロさんは、少し前に大枚を叩いて手に入れたというフルートをまるで恋人のように愛でています。その楽器は吹いていて実に気持ちが良いのだそうです。なんでもフルートは穴を押さえる蓋がドーナツ状で中心に穴が開いているリングキーと呼ばれる仕様と、マンホールみたいに穴が完全に塞がるカバードキーというのがあるのだとか。そしてヒロさんはそれまでカバードキーを使っていたけれど、新しく手に入れたフルートはリングキー。リングキーはその穴のおかげで管の中の息が篭りにくいので、音の抜けが良いんだそうですが、その反面きちんとその穴をしっかり塞がないといけないので、運指が慌ただしい早いパッセージの曲は難しいのだとか。そんな風にメーカーで開発に従事されて来られた方らしく、理系っぽくロジカルに解説してくださるので、なかなか知的好奇心を掻き立てられるのですが、愛情深く語るのでなんだか美しくて天の邪鬼なツンデレ娘のじゃじゃ馬まわしを気取るおじさんのおのろけ話のようにも聞こえます。

ヒロさんは、いつも大体決まって水曜日になると、その日に吹きたいレパートリーに合わせてそのリングキーのフルートだったり、カバードキーのフルートだったりを携えてCozyに顔を出しては、「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲や「ボレロ」のようなクラシックやボサノバの名曲「イパネマの娘」をCozyが誇る超絶ピアニストMちゃんの伴奏に合わせて演奏します。それから夏実ママやお客さんが唄う「卒業写真」や「糸」のようなポップス曲にフルートで器用に合いの手を入れたりしてその場を和ませています。

そんなヒロさんがCozyで楽しんでいる様子を見ていると、そのボトルキープしているシーバス・リーガルとジャック・ダニエルにも何かこだわりのようなものがありそうな気がしてくるのですが、いつも僕はいつの間にか酔っ払ってしまって、それを聞かずじまいです。

TwoBottles

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